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企業・ブランド 協賛の活用

スポーツ協賛を他部署も使いたくなる仕事にするには

執筆:杉本 啓(代表取締役)
スポーツ協賛を他部署も使いたくなる仕事にするには

この記事のまとめ

協賛を他部署が自分たちの仕事として使えるようにするには。LVMH、明治安田、ASICSから参加の入口を考え、営業部が判断できる一枚の作り方を仮の例で示します。

会社がスポーツを応援していることは知られている。試合の案内も全社へ送っている。それでも、企画を考え、権利元と調整し、報告をつくるのは、いつも同じ担当部署。活用を広げたい人ほど、社内への声かけという仕事まで抱えてしまいます。

案内を受ける営業には顧客との面談があり、人事には採用や育成の予定があり、店舗には日々の運営があります。面白そうな企画でも、自分たちの仕事にどう役立ち、どれだけ時間や費用がかかるか分からなければ、すぐには手を挙げられません。

僕は、各部署が既に進めたいと思っている仕事から話を始めたいです。顧客と話す機会が必要なのか、社員に商品を理解してほしいのか。相手の目的へ協賛がどう役立つかが見えると、参加する理由が具体的になります。

共通の協賛を、営業の顧客との対話、人事の社員の学び、店舗や拠点の地域との接点に分けて考える図。各部署の目的と予定を聞き、権利、担当、追加費用、負担を揃える。
図解:部署名は使い方の例。共通の協賛から、各部署の仕事が進む目的・担当・費用を分けて考える。

他部署の仕事が進む使い方を探す

協賛費を持つ部署に、権利の情報と判断が集まるのは自然なことです。対外的な責任を負う以上、利用の確認も必要でしょう。ただ、その部署を通さなければ何も分からず、何も決まらない状態では、相談が集中します。確認を待つ間に、実施できる時期が過ぎてしまうこともあります。

費用も同じです。契約に選手出演の権利があっても、移動、会場、制作には別の費用がかかる。実行する部署の計画に入っていなければ、活用の提案は追加の負担になります。相手の予定や決裁の時期を聞くのは、企画を考える前の大事な仕事です。

もう一つ確かめたいのは、既存の仕事を何も変えずに、新たな仕事だけを足していないかということです。営業が予定している顧客との面談を協賛の機会と組み合わせるなど、日常の仕事と接続できれば、参加する側も必要性を判断しやすくなります。

共通の舞台に、異なる専門性を持ち寄る

LVMHのParis 2024への関わりには、専門性を分けて生かす考え方が見えます。Chaumetはメダルのデザイン、Berlutiはフランス代表団の開会式用衣装、Louis Vuittonはメダルや聖火トーチのトランク、メダルトレーを担いました。LVMHによる役割の発表

ここから参考にしたいのは、一つの大会に各メゾンが得意な仕事を持ち寄る発想です。それぞれのものづくりが、選手にとって大切な式典や表彰の場に入っています。自社でも、商品開発なら何をつくれるか、物流なら何を支えられるかと考えられます。

この発表だけで、社内調整の方法や負担が軽くなったかまでは分かりません。自社へ持ち帰るなら、「全部署に協力してもらう」という呼びかけを、どの専門性が必要なのかという具体的な相談へ変えることが出発点になります。

社員や拠点の経験を、顧客の価値へつなぐ

明治安田は、本社のJリーグ協賛に加え、全国の支社等が地元クラブと個別にスポンサー契約を結び、従業員が地域の人を観戦へ誘う活動を続けています。2024シーズンの公式報告には、サッカー教室、ウォーキング、地域ごとの協働も紹介されています。明治安田の活動報告

共通の協賛に、地域拠点が持つ人との関係を重ねています。地元のクラブを応援したい気持ちも、参加する理由になる。本社から情報を送る際に、各地の顧客や地域の事情を生かせる余地まで用意できるか。この視点は、拠点の多い企業で考える手掛かりになります。

ASICSは、ストアスタッフ二人が東京マラソン2019へ挑む過程を、自社の記事で紹介しました。準備への不安を取り上げ、ランニングラボの測定やコーチの助言を受ける様子を、ランナー向けの情報として伝えています。ASICSの東京マラソンチャレンジ記事

社員自身の経験を、顧客が知りたい情報にしています。自分も迷ったことがあるから伝えられる内容は、店舗の会話にもつながり得るでしょう。社員参加を考えるなら、本人の希望や負担を聞き、その経験をどんな仕事へ返せるかまで考えたいです。

各社の組織運営を同じ型として使うことはできません。ただ、メゾンの専門性、拠点の関係、社員の経験と、既にある力を生かす入口が違うことは見て取れます。自社にはどの入口があるかを探す方が、部署数を増やすことより先です。

営業部が使う一枚をつくってみる

仮に、営業部が既存顧客と今後の課題を話す機会を求めているとします。協賛先の試合観戦を、その対話のきっかけにできないか。この相談なら、協賛担当と営業で、実施を判断するための一枚をつくれます。

最初に書くのは「誰と、何を話すために行うか」です。招待する顧客と、普段の面談では聞きにくいテーマを営業が考える。観戦そのものの楽しさを守りながら、試合前後に無理なく会話できる時間を探します。顧客が楽しめるかも、営業の都合と同じくらい大事です。

同じ一枚に、使える招待券や会場の条件、申請期限、追加費用、その負担部署を書きます。営業は顧客の選定、招待、当日の対話、後日の連絡を担当し、協賛担当は権利の確認とクラブとの調整を支える。どこまで決まれば申し込めるのか、誰が社内承認を取るのかまで見える形にするわけです。

選手との交流を加えたいなら、この時点で実現できると約束せず、競技日程や本人の意向を含めて権利元へ相談します。出演の有無で企画全体が成立しなくなるなら、観戦と対話だけでも目的に近づける内容を考えておく必要があります。

実施後は、成果と負担を一緒に見る

この仮例なら、参加人数と満足度に加え、どんな会話ができたか、その後に話し合うテーマが見つかったかを営業と振り返ります。すぐに商談へ進まなくても、顧客との関係に何が起きたかは記録できます。

同時に、申請から実施まで何に時間がかかったか、担当者が何を繰り返し説明したかも残します。案内文や申請書を次回も使えるように整えれば、他部署のための準備が、協賛担当自身の仕事も進めてくれます。

各部署が自分たちの目的を持ち、引き受ける仕事を理解して参加する。その力が、選手や地域、顧客へ届く。僕は、共通の協賛を、異なる専門性が生きる場へ育てたいと思っています。

参考資料

  1. LVMH: Paris 2024 and LVMH unveil the outfits and medals trays for the Victory Ceremonies(2024年)
  2. 明治安田:Jリーグ観戦者数および2024シーズンの主な協働取組み(2025年1月15日)
  3. ASICS:完走やケガの不安があるならまずラボ計測を。東京マラソンチャレンジvol.1(東京マラソン2019)

この記事を書いた人

杉本 啓

株式会社イレブン・プラス 代表取締役。スペイン・バルセロナの大学でスポーツマーケティングを専攻し、IMG Japanでのインターンを経て電通に入社。その後、Red Bull JapanでAthlete Marketingを担当し、アスリート契約、イベント、映像制作を経験。2017年にアスリートマネジメント会社イレブン・マネジメントを、2023年にイレブン・プラスを設立。ブランドと競技、双方の実務経験をもとに、企業の課題と現場の声に向き合い、案件に応じた専門チームで企画から実行までを支援します。

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