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協賛ブースに人が来ないときに考えたい立ち寄る理由

執筆:杉本 啓(代表取締役)
協賛ブースに人が来ないときに考えたい立ち寄る理由

この記事のまとめ

ブースの集客を、場所や呼び込みだけで考えていないでしょうか。東京マラソン、adidas、Samsungの事例から、来場者の関心、参加する気持ち、企業の役割を結び、小さなブースでも実行できる体験設計を考えます。

大会当日、入場ゲートや人気の撮影スポットには人が集まっているのに、協賛ブースの前では足が止まらない。商品もスタッフも用意した企業には、もっと良い場所があれば、という気持ちがあるでしょう。主催者も、安全な通路や競技運営を守りながら、できる限りの場所を確保しています。

ただ、来場者には来場者の都合があります。選手は受付と準備で頭がいっぱいかもしれません。家族は応援場所を探し、観客は目当ての試合に遅れたくない。何ができる場所か、どれくらい時間がかかるかが見えなければ、気になる展示でも通り過ぎてしまいます。

僕は、人が来ない理由を考えるとき、その人がその時に、何をしたかったのかを知りたいです。区画を用意して商品を並べたところから、企業と来場者の接点をつくる仕事が始まります。

来場者の一日の中で得たいこと、企業の得意なこと、場所や時間や案内などの参加条件を一緒に見て、自然に立ち寄りたくなる体験を考える図。人数と企業の記憶は分けて振り返る。
図解:体験内容と運営条件を一緒に設計する。来場者の一日に、立ち寄る時間と理由があるかを確かめる。

会場図の前に、来場者の一日を見る

出展場所には、電源、搬入、避難経路などの条件があります。そこへ体験内容を後から当てはめると、通る人の状態と、企業がしてほしいことが合わなくなる場合があります。人通りが多くても、移動を急ぐ人ばかりなら、長い説明には向きません。

商品説明、試用、撮影、会員登録を一度にお願いすると、来場者は何をする場所なのか分かりにくくなります。主催者と企業が最初に話したいのは、誰のどの時間に、どんな楽しさや助けを加えるかです。競技前の参加者と、応援の合間に時間がある家族では、用意したい体験が変わります。

三つの事例は、立ち寄る理由が違う

東京マラソンEXPO 2025の公式レポートでは、大塚製薬がレース当日の給水所を再現し、ポカリスエットを提供した様子が紹介されています。セイコーには、ランニングタイマーに自分の目標タイムを表示して撮影できる場所がありました。いずれも、大会を前にしたランナーが、自分のレースを思い描きながら関われる内容です。

ここで参考になるのは、大会前の関心に、企業の仕事が入っていることです。給水や目標タイムは、これから走る人にとって自分の話になります。商品や設備を見る理由を、参加者が既に持っているわけです。

adidasの「Liquid Billboard」は、ドバイのビーチに泳げる広告を設置し、一般の女性が中で泳いで広告の主役になる企画でした。制作側の説明によると、出発点には、公共の場で泳ぐことに抵抗を感じる女性の存在がありました。adidasは、体形、能力、民族、宗教にかかわらず女性が泳ぐことを楽しめるようにと、新しい水着のコレクションを展開していました。

水槽の大きさに目が行きますが、面白いのは、普段はモデルや選手を広告で見る側だった人が、自分もそこに参加できることです。商品の目指す変化を、人の行動として表しています。単に水着を展示するより、その企業が誰のために何を変えようとしているかが見える。ブースでも考えたい、参加者の役割を変える発想です。

Samsungがパリ2024に合わせて発表したSquare Marignyの体験拠点では、外から中をのぞけるガラスの外観と、Galaxy AIなどを試せる内容が組み合わされていました。大会を訪れた人の移動や撮影にもつながる機能を体験できる設計です。何があるかを外へ伝え、入った後の楽しみへつなぐ考え方が参考になります。

東京マラソンは今の関心に応え、adidasは参加する人を主役にし、Samsungは外からの興味と中の体験をつないでいます。設備をそのまままねるより、自分たちはどの理由で立ち寄ってもらうのかを選ぶ。その違いを残して事例を見たいと思います。

小さなブースを一つ設計してみる

仮に、地域の印刷会社が市民マラソンへ協賛するとします。会社案内を配ることに加えて、応援する家族が自分の言葉を形にできる場所を考えられます。応援したい一言や描いた絵を、その会社の印刷技術で応援カードにする。目の前で自分の言葉が仕上がる楽しさがあり、受け取った後は沿道で使えます。

この仮案なら、まず家族が応援までのどこで立ち寄れるかを運営側と確認します。選手の通過を見逃す心配がある場所で、長く待たせるわけにはいきません。入口にはできることと受け取りまでの目安を示し、作る内容を絞る。印刷の速さや必要なスタッフ、混雑時の受け付け方を確かめてから、無理なく引き受けられる人数を決めます。

持ち帰ってほしいのは、カードとともに、自分たちの応援を形にしてくれた会社だという記憶です。企業の技術が参加者の楽しさを支えています。良い写真が撮れることや、誰かを喜ばせられることも、立ち寄る理由になります。そのうえで、その企業が入った意味が体験の中にあるかを見ます。

実際の準備では、車いすやベビーカーでも入りやすいか、列が通路を塞がないかも、会場全体を見る担当者と確認します。登録や撮影が必要なら、目的と条件を入口で伝える。楽しそうだと思って入った後に、予想以上の手続きが待っていれば、体験への印象も変わります。

人数の先に、何を持ち帰ったかを見る

当日は、前を通った人、立ち止まった人、体験した人を分けて観察すると、直す場所が見えます。通行はあるのに止まらないなら、案内や内容が伝わっていないのかもしれない。関心があるのに離れるなら、待ち時間や手続きが負担なのかもしれません。列の長さだけで体験の良さを判断しないことも必要です。

短い会話でも、何が楽しかったか、どんな会社だと思ったかを聞けます。印刷会社の仮案なら、カードを受け取った後に実際に応援で使えたかも知りたいところです。人数と体験の感想、企業の役割への理解が分かれば、次回は場所を変えるのか、内容や受け付け方を直すのかを話せます。

協賛ブースは大会の一部です。来場者にとっての良い時間が増え、その体験に企業の仕事が結びついている。そこまでつくれると、主催者と企業は、場所の良し悪しに加えて、次はどんな体験を育てるかを話せるようになります。

参考資料

  1. 東京マラソンEXPO 2025開催レポート(2025年2月28日)
  2. Jack Morton: adidas — Liquid Billboard
  3. Samsung: Olympic Rendezvous @ Samsung | Square Marigny(2024年7月25日)

この記事を書いた人

杉本 啓

株式会社イレブン・プラス 代表取締役。スペイン・バルセロナの大学でスポーツマーケティングを専攻し、IMG Japanでのインターンを経て電通に入社。その後、Red Bull JapanでAthlete Marketingを担当し、アスリート契約、イベント、映像制作を経験。2017年にアスリートマネジメント会社イレブン・マネジメントを、2023年にイレブン・プラスを設立。ブランドと競技、双方の実務経験をもとに、企業の課題と現場の声に向き合い、案件に応じた専門チームで企画から実行までを支援します。

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